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『500年の学校〜おとなのためのフォルケホイスコーレ〜』 第2期開催レポートvol.9(2026年6月)
7月6日(日) 本をひらき、自分をひらく。
先月に続き、この日も雨模様の日曜日。
今年はどこか久しぶりに「梅雨らしい梅雨」を感じます。
「今日は晴耕雨読ですね。読書日和です。」
森岡さんのそんな一言から、第8回の学びが始まりました。
朝のシェアでは、この日のテーマである「読書」と、それぞれの本との付き合い方についての声が多く聞かれました。
本が好きな人も、少し苦手意識を持っている人もいます。今回は事前課題に向き合った時間があったからこそ、本との距離や、自分自身との向き合い方をあらためて見つめ直したという方もいました。
午前は、本堂での坐禅。
気温が穏やかだったこともあり、静かな時間に自然と集中が深まっていきます。
雨の日ならではの落ち着いた空気のなか、自分の呼吸や身体の感覚をゆっくりと味わいました。
昼食は「ときとそら」の精進御膳。
七夕にちなみ、かつて短冊として使われていた葉が添えられた、この季節ならではの献立です。
さらに、ここ数か月みんなで観察してきたお店の前のヤマモモがドレッシングとして登場。
一つひとつの料理に込められた意味や季節へのまなざしを感じながら、繊細な味わいを楽しみました。
この日は卒業生も加わり、新しい交流が生まれ、会話にも花が咲きました。
昼食後は45分間の読書タイム。それぞれが思い思いの場所へ移動し、『茶の本』を静かに読み進めました。雨音が響く境内で本をひらき、自分自身と向き合う穏やかな時間となりました。
午後は森岡さんによるスライドを交えたレクチャーからスタート。森岡書店のこと、タラブックスとの取り組み、ソール・ライターや柳宗悦、中国での活動など、話題は縦横無尽に広がりながらも、どれも一本の糸でつながっているような時間でした。
その自由な語り口と尽きることのない探究心に、参加者の皆さんも笑顔で耳を傾けていました。
今回取り上げた『茶の本』から、ジョージア・オキーフが線を引いていたという一節を手がかりに、「余白」や「見ること」について考えました。
「何もいわないでおくところに、見る者は考えを完成させる機会を与えられる。」
作品に残された「虚」が、見る人の感情や想像力を受け止め、作品そのものの一部となる──そんな美についての考えを共有したあと、参加者それぞれが心を動かされた作品を、自分自身の言葉で紹介し合いました。
今回はこれまで以上に知的な題材に向き合い、『茶の本』を読むという事前課題もあったため、皆さんにとって負担にならないだろうかと少し気がかりでもありました。しかし、その時間があったからこそ、一人ひとりが自分自身と向き合い、自らのルーツや価値観を見つめ直し、その一端を互いに分かち合う豊かな時間が生まれたように感じます。
森岡さんは、長谷川等伯の《松林図屏風》を紹介。「実物は平面ではなく、空間そのものを体験するような作品」と語り、和蝋燭の灯りのもとで見ることを前提として描かれた絵画の魅力についても話してくださいました。
続いて参加者の皆さんからも、思い思いの作品が紹介されます。
石岡瑛子によるPARCO広告、タラブックスの『夜の木』、オスカー・シュレンマーの舞台芸術、セバスチャン・サルガドの写真集、横尾忠則、映画『ラストエンペラー』、藤井風の「grace」、パッヘルベルの「カノン」、自ら撮影した写真、寺山修司の演劇、小説や建築、絵本まで──そのジャンルは実にさまざま。
作品そのものだけではなく、「父の本棚で出会った原点」「世界を自分の足で見に行くきっかけになった一冊」「弱さを抱えたまま生きることを教えてくれた物語」など、それぞれの人生と作品が重なり合うエピソードが語られました。
一人ひとりの背景に触れる時間は、その人自身を知る時間でもありました。
その後のダイアローグでは、「生きる」をテーマに対話を行いました。
どのグループも終了時間を過ぎてもなお話が尽きず、それぞれの輪で対話が深まっていた様子が印象的でした。
最後の振り返りでは、「みんなが紹介した作品や、その背景にある物語を聞けたことが面白かった」という声が多く聞かれました。
また、「読書というテーマに少し身構えていたけれど、とても充実した一日だった」「森岡さんのまっすぐな探究心に刺激を受けた」といった感想も寄せられました。
なかでも印象的だったのは、『夜の木』を紹介した受講者の方の言葉です。これまでは生活に必要なものだけを買うようにしてきたけれど、この本との出会いをきっかけに、「必要だからではなく、心が動いたから手に取る」という選択を、自分に許せるようになったと話してくださいました。
皆さんの感想を受けて森岡さんも、「皆さんが紹介してくれた作品も、そのとき語ってくださった言葉も、すべて思い出せるくらい印象に残っています」と語られました。
作品を通して誰かの人生に触れ、自分自身を見つめ直した一日。
紹介された作品だけでなく、その背景にある物語もまた、参加者それぞれの心に残る時間となりました。
気がつけば、この一年の学びも残すところあと3回。
一つひとつの時間を重ねるなかで育まれてきた対話や関係性が、この先どのような景色を見せてくれるのか。
残りの時間も、大切に味わっていきたいと思います。
<1日の流れ> AM 朝の気持ちのシェア/坐禅/PM 読書「茶の本」・読書会/ダイアローグ・振り返り









