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「500年の学校」 開催レポートvol.3(2025年5月〜7月)
2024年11月に開講した500年の学校。
季節は移ろい、日差しが溢れる初夏から本格的な夏へと変わりました。これまでに培われた気づきや関係性を土台に、植物が太陽に向かって伸びていくように、受講生の皆さんもまた、さまざまな体験を通して、伸びやかに新しい挑戦をされています。
ここではvol.1、vol.2につづき、「第7回」から「第9回」までの様子を、プログラムの内容や受講された皆さんの声を通して、日記を読むように感じていただけたらと思います。
Day7 5月4日(日) 自分を撮る、自分の現在地を見る。
晴天。清々しい陽気。
いつの間にか季節は移ろい、桜の季節から、緑が生い茂る初夏を迎えました。
この日は「自分を見る」ことをテーマに、写真家の在本彌生さんを講師にお迎えし、2種類のセルフポートレートを撮影しました。
1つの目のセルフポートレートは、「今の自分の姿」。在本さんがセッティングしてくださったライカを使い、在本さんとイメージをすり合わせながら自分の姿を撮影します。2つ目のセルフポートレートは、「今、心が動かされるもの」。簗田寺の境内を散策しながら心惹かれるものを探し、そこに「自分を投影した写真」を撮影しました。
中には、写真を撮られることが苦手、自分の顔が好きではないと語る受講者の方もいたのですが、その日撮影したセルフポートレートから見えてきたのは、「力強い自分」、「朽ちていく自分」、「誰かに支えられている自分」、「動き続ける自分」といった、自分でもはっとさせられるような「自分」の姿。それらはどれも、理想や好き嫌いを超えた先に見えてきた「自分の現在地」といえるものでした。ずらりと並んだ仲間のポートレートは、知っているはずなのに、知らない人の姿のようで、とても不思議な感覚でした。
<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/在本さんとセルフポートレートを撮影/境内を散策して自分を投影した写真を撮る/昼食/pm:撮影した写真を発表/ダイアローグとふりかえり
Day8 6月1日(日) 自分の声を出す、声の仮面をはずす。
雨上がりからの好天。
湿気を帯びた簗田寺。青々とした苔が美しく、紫陽花も少しずつ咲き始めていました。
今回はアーティストのコムアイさんを講師にお迎えし、「声(声の仮面)」をテーマに一日を過ごしました。まずは「聴く」ことを意識して簗田寺の境内を散策。耳を澄ませて歩くと、小さな虫のうごめきや小川のせせらぎ、風に揺れる葉の音など、自然の繊細な動きを感じることができます。散策後には、コムアイさん直伝の「声をほぐす」ストレッチを行い、みんなで声を出していきました。
昼食後に行ったのは、声を出してハーモニーを作り出すワーク。インドの楽器「タンプーラ」の音色をベースに、みんなで声を重ねていきます。楽器のように純粋に声を発する行為はとても心地よく、自分でありながら、全体と一つに溶け合うような不思議な感覚を味わいました。
最後に行ったのは、キャラクターになりきって絵本を読むというワーク。薄暗い書院で輪になり、コムアイさんが出したお題の役――例えば5歳児、おばあちゃん、閻魔大王、アナウンサーなどになりきって、絵本を1ページずつ音読します。目指す声と実際の声のギャップや、お互いの奮闘ぶりに、みんなで大笑い。様々なキャラクターになって声を出すことで、無意識のうちに演じている自分を解放することがこのワークの狙いだそうです。ダイアローグの時間では「自分で課していたセルフイメージをいかに手放すか」という、その重要性に気づけたという声も上がりました。
特に印象的だったのは、コムアイさんが伝えてくれた「みんなとても良い声をしているね!」「ちゃんと声が響いていたよ!」という言葉。安心や信頼があるからこそ、その人本来の声が響き渡るのだそうです。500年の学校で育まれたみなさんの関係性をとても誇らしく感じた一日でした。
<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/境内の散策/ストレッチと声出し/昼食/pm:声でハーモニーを作る/キャラクターになりきって絵本を読む/ダイアローグとふりかえ
Day9 7月6日(日) 我がままに、書くことを楽しむ。
真夏日。日差しがじりじりと暑い。
真夏の季節を迎えた簗田寺。軒先の七夕飾りと風鈴の音が、涼やかな心地よさをもたらしてくれました。
今回は書楽家(しょがくか)の安田有吾さんを講師にお招きし、「書を楽しむ」をテーマに一日を過ごしました。
座禅で心と身体を整えた後、まず行ったのは、安田さんが出すお題に沿って文字を書くというワーク。「目をつむって書く」「ペアになって相手の指示を頼りに文字を書く」「左右・上下逆さの文字を書く」など、さまざまなお題に沿って筆を動かしていきます。自分でコントロールできないからこそ、「きれいに書かなければいけない」という固定観念から解放され、筆を動かす行為そのものを味わえました。この「ままならなさ」をみんなで面白がり、終始、笑いの絶えない時間となりました。
次に行ったのは、屋外に出て大きな筆を使い、みんなで一つの文字を書くというワーク。安田さんが選んでくださった「鯨」という字を、3メートル四方の紙に一人一画ずつ書いていきます。一つの点や線でも、体全体を使って書くのは気持ちが良いもの。調和にとらわれない「我がまま」な線が生まれるほど、場が盛り上がりました。
その後のダイアローグでは、大きな筆を両手で握ることが、自分の野生を開放するスイッチになったという気づきを語ってくれた方もいました。そうして現れた、ほとばしるような「鯨」は、一人ひとりが自由に書いたにもかかわらず、不思議と一つの命を宿しているようでした。
<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/坐禅/いろんなお題で書を楽しむ/昼食/pm:大きな筆を使いみんなで一つの文字を書く/ダイアローグとふりかえり
第7回から第9回では、「自分を見る」「声の仮面をはずす」「(きれいに書くことを手放して)書を楽しむ」といったテーマで、自分自身の姿と向き合いました。無意識のうちに自分を縛り付けていた固定概念やセルフイメージをいかに手放していくかについて、深く考えることができたように思います。対話や体験を通して築いた確かな関係性があるからこそ、格好悪くても、上手くできなくても、挑戦すること自体を面白がり、お互いをたたえ合う、そんな豊かな時間を過ごすことができました。これから私たちの旅は終盤を迎えます。次回のレポートもお楽しみに。
私たちの旅はまだまだ続きます。次回のレポートもお楽しみに。




















