YATO

500年のCOMMONを考える

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「500年の学校」 開催レポートvol.1(2024年11月〜2025年1月)

REPORT

2024年11月、“500年のcommon”を考えるYATOプロジェクトの核となる『500年の学校』がいよいよ開講しました。
500年の学校は、デンマークのフォルケホイスコーレをモデルとしながら、豊かな里山に囲まれた簗田寺の特色を活かし、多様な体験を通して未知なる自分と出会い、人生をふくよかにしていくための全く新しい学び場です。20名の受講生を仲間に迎え、多彩な講師の方々と共に、この学び場はどのように育っていくのでしょうか-。

ここでは「初回」から「3回目」までの様子を、プログラムの内容や受講された皆さんの声を通して、日記を読むように感じていただけたらと思います。

 

 

Day1  11月3日(日) 出会いと、大きな物語のプロローグ。

 

晴天。心が晴れるような青い空。
秋晴れの心地よい気候に見守られるように500年の学校 第1期が幕を開けました。
ここに集まった仲間はそれぞれに新しい一歩を踏み出そうとしているのだと、何だか誇らしい気持ちになりました。初回となるこの日は、さながらこれからはじまる物語のプロローグのよう。

まずは校長である簗田寺副住職の齋藤紘良さんから、簗田寺やこれから学びを進めるうえで共有したい仏教の教えについてお話を伺い、坐禅や散歩禅、掃き作務など、自分の体を動かして教えを実践しました。「ときとそら」で精進御膳をいただいた後は、「風と地と木 合同会社」代表の宮田尚幸さんをお迎えして「ダイアローグ」を体験。「他者を認め多様性を受容する」「間違いは存在しない」など、500年の学校のひとつの軸であるダイアローグの大切な前提や心がまえを教えていただきました。

はじめは皆さん緊張した面持ちでしたが、「なぜここに来たのか」、「自分の夢は…」、普段は表立って語ることのない人生や価値観につながる言葉を互いに聞き合い、さまざまな体験を共にするなかで、次第にほぐれ、交流も生まれていきました。この場所で、この仲間と、新しい学びの冒険の旅がはじまります。

<1日の流れ>am:自己紹介(受講理由や期待すること)/仏教の教えと坐禅・散歩禅・掃き作務(簗田寺副住職 齋藤紘良)/昼食/pm:ダイアローグとふりかえり(「風と地と木 合同会社」代表 宮田尚幸)

 

 

Day2  12月1日(日) 簗田寺の自然と、お香と、直感と。

 

初回に引き続き、晴天。
例年より遅れて色づいた簗田寺の鮮やかな紅葉が私たちを出迎えてくれました。この日まず取り組んだのは、里山の下草刈り。下草を刈ることで、光と風と水の通り道ができ、自然の円環的サイクルを促すことができるそう。鎌を使って黙々と草を刈るのは思いのほか楽しく、下に隠れていたどんぐりには太陽の光が降り注ぎはじめました。中には、木に吊るしたブランコで乗って遊ぶ受講生の姿も。

地元の旬の野菜をふんだんに使った昼食を食べた後は、「しぜんの国保育園 small village」の園長 斎藤美和さんによるお香作りを体験。無花果や蓬など、お香の素材の多くは簗田寺の植物というから驚きです。30種類ほどの中から“直感”で好きな香りを選び、お寺の湧き水を加えて手で捏ると、ふわふわのお香が完成しました。このように2日目は、簗田寺の豊かな自然にじっくりとかかわる1日に。ダイアローグの時間では、お香の素材を直感で選んだ体験から「直感」をテーマに対話しました。

――「ここは自分たちの学校」。この言葉は、1日の最後に行うふりかえりの時間で語られた言葉です。皆さんの中に仲間意識がゆるやかに芽生え、子どものように“今ここ”に素直に向き合う時間を心から楽しんでおられる様子でした。

<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/里山の手入れ/昼食/pm:お香づくり(「しぜんの国保育園 small village」園長 斎藤美和)/ダイアローグとふりかえり

 

 

Day3 1月12日(日) 見えない音を見る、対象の声を聴く。

 

真新しいキャンバスのような白い曇り空。
冷たい空気に触れ身も心もくっきりするような寒空の下、新しい年の学びがはじまりました。この日のテーマは「聴く」。まずは坐禅で自分の身体や呼吸に耳を澄ませて、身体と心を整えます。次に体験するのは、彫刻家の金沢健一さんによる音とコミュニケーションのワーク。直径1メートルほどの円形金属板をゴムボールが付いた棒でこすると、驚くほど大きくずっしりとした音=振動が部屋全体に響き渡ります。金属板を介して、音に指で“触れる”、粉をふるうことで音を目で“見る”という体験をしました。他にも、相手の動きを感じながら2人1組で行うドローイング、金属を熔断して作られた《音のかけら》という作品を全員で奏でるセッションを行いました。

ドローイングでは皆さん、相手に呼応したり離れたりと自由に楽しめていたようですが、続くセッションでは、まわりの音を聴いて、自分から変化を作って楽しめる人と、上手く乗れずに自分の音を奏でられない人がいたのが印象的です。「対象の声を聴くことは、自分に思わぬ変化をもたらしてくれる。聴いて沿うと同時に、自分を出すことで、更なる変化が生まれる」と金沢さんは語ります。素材や他者など、対象の声を「聴く」ことと「自分」の境界、そのせめぎ合いこそ面白いのだと。そこから生まれる創造性や醍醐味を存分に体験できた1日となりました。

<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/坐禅/音のコミュニケーションのワーク前半(彫刻家 金沢健一)/昼食/pm:音とコミュニケーションのワーク後半(彫刻家 金沢健一)/ダイアローグとふりかえり

あらゆることは因と縁から起こること。
いくら用意や準備をしても、学び場で起こるすべてのことをコントロールすることはできません。
そのような中でも、初回から3回目にかけ、「仲間と場に出会い」、「里山の自然とかかわり」、「自他のかかわり方に気づきを得て」…、ゆっくりと1歩1歩ですが、学びを深めていっているように感じています。私たちの旅ははじまったばかり。
次回のレポートもお楽しみに。

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